「健康トピックス」

北國新聞 ”健康ノート”、”丈夫がいいね”、”健康よもやま話”
金沢有松病院分掲載中

〜爪の変化(上)  健康のバロメーター〜

(2013年5月29日(水) 北國新聞 丈夫がいいねに掲載分)

ネイルアートでオシャレを楽しんでも、爪の役割について真剣に考えたことのある人はそんなに多くないだろう。
爪は指先を守るだけでなく、さまざまな病気や不調を知らせてくれる。

爪は、指の先端にある表皮の角質が硬く変化したもので、髪の毛と同様、「ケラチン」と呼ばれるタンパク質の一種でできている。
手足の指先を保護し、爪のおかげで、手で小さな物をつまんだり、安定して立ったり歩いたりできる。

古くから「爪は健康のバロメーター」と言われてきた。その理由について、金沢有松病院皮膚科の竹田公信医長は「色や形の変化など、爪の持つ情報量は多い」と説明する。
例えば色。健康な人の爪は透明度がある薄ピンク色をしている。
「皮膚科医として一番注意を要するのは、特定の爪が黒色に変化した時」と竹田医長は話す。

■皮膚がんの恐れ
金沢市の60才男性は、足の親指に黒く淡い筋ができているのに気付いた。
どこかにぶつけた記憶はない。痛みはないので放置していたところ、筋が太くなり、爪を押し上げるように盛り上がってきた。
男性の指は、皮膚がんの一種、メラノーマ(悪性黒色腫)に侵されていたのだ。

メラノーマとは、メラニン色素を作る細胞であるメラサイトが悪性化して生じる。
竹田医長によると、メラノーマは、がんの中でも短期間で全身に広がる恐れがあり、予後が悪い。
「爪部に見つかった時点で全身へ転移していないか精査が必要」とし、すぐにPET(陽電子放射診断撮影装置)などによる検査を受ける重要性を指摘する。

メラノーマは体のどこにでもできるため、爪もターゲットとなりえる。
指先をぶつけたり、挟んだりした時に爪が内出血で黒ずむ症状と似ているが、見分けるポイントは、爪の根元部分の皮膚の状態。皮膚の一部まで黒く広がっていると、メラノーマが疑われる。
進行すると爪の変形や割れも現れてくるという。

■黄や緑にも変化
このほか、複数の指で、爪全体が黒っぽくなった場合、抗がん剤などの薬の影響が考えられる。
関節リウマチの薬などでは、爪が黄色くなることもある。
薬以外では、リンパの循環障害の可能性もあり「イエローネイル」と呼ばれ、爪の伸びがやや悪くなる。

色の変化では「グリーンネイル」と呼ばれる疾患もある。
緑色の正体は緑膿菌。つけ爪を付けて指先のオシャレを楽しむ人が増えているが、つけ爪が浮いた状態で放置しておくと、隙間に菌が入り繁殖しやすくなるので気を付けたい。